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美術館鑑賞の手引き(中学生向け)

■アートは難しい?


「アート」や「芸術」と聞くと、とても高尚なものを想像して身構えてしまうかもしれません。

特別なセンスがないとアートは理解することができない、と思っている人もいるのでは?

要するに、アートは難しそう、と思う人が少なくないということです。


覚えておいてほしいのですが、アートは正解や不正解で語るものではありません。

答えがないのがアートです。

そして、自分なりの答えを生涯を通して探し続けるのが、アーティストや芸術家と呼ばれる人の生き方です。


例えば、この二つの作品を見てください。

一見しただけでは同じ作家の作品とは思えませんよね。

40年以上の年月を通して、何を表現すべきか探求してきた結果と言えます。

《武蔵野の木立ち》万代進 (1974年)
《M4419 銀河がみえる》万代進 (2020年)

※いずれも、たましん美術館「足跡」展 第1期(2020.11.28-12.27)にて展示


皆さんも実感していることでしょう。

この1年間で今までの当たり前が、あっという間に当たり前ではなくなったことを。


「これをしていれば大丈夫」ではない、答えのない世界に私もあなたたちも生きています。

そんな世界で、自分なりの答えを探し続ける力は、はたしてアーティストだけに必要なものでしょうか?

考えてみてくださいね。


■アート鑑賞に知識は必要?


一枚の絵を前にして


「何が描いてあるか分からない」

「なんでこの絵が評価されているのか理解できない」

「やっぱり自分に美術の知識や教養がないから分からないのかな?」


と思うことはありませんか?

美術館でもそう言って悩んでいる人をよく見かけます。

例えば次の2枚の絵はどうでしょうか?「写実的な意味で上手」とは少し違う気がしますよね。

《流れるはなびら・トスカナの麦》清水洋子
《Landscape 93-5》谷充央

※いずれも、たましん美術館「足跡」展 第2期(2021.1.9-2.7)にて展示


「知識があれば、アートの良さが分かる」


これは半分正解で、半分不正解です。


さきほどの話と関係しますが、今までになかったものを創り出すことが、アーティストの仕事です。

だから、鑑賞する側が、美術の歴史や作家その人についての情報、時代背景(少し難しい言葉を使うなら、作品が生まれるまでの文脈)を知識として身につけておくと、その絵がどんなに画期的だったのか、どんな無謀な挑戦をした上で生まれたのか、といったことが見えてきて、よりその絵の魅力を理解することができるかもしれませんね。


でもその見方が唯一の正解なのではありません。

最初に「答えがないのがアート」と言いましたが、正解探しをするのがアート鑑賞ではないのです。

これってとても気楽なことだと思いませんか?


一枚の絵を前にした時、まずは自分の気持ちの変化に注目してみましょう。

なんだか心がざわついたけど、どこにひっかかったのだろう?

色だろうか?形だろうか?描き方だろうか?


そうやって自分で自分に問いを重ねていく、アート体験ではそれが一番大事なことであり、誤解を恐れずに言えば、作品はあなたが思考を深めていくきっかけに過ぎません。


うまくいけば問いはさらに広がっていくでしょう。

じゃあ、他の作品と比べてこの作品は何が違うんだろう。

この作者は他にどんな絵を描いているんだろう? こんな感じで、ぜひ自分だけの問いと答えを作ってください。知識を身につけるはその後で大丈夫です。


■美術館ってどんなところ?


最後に、アートに少し興味が出てきたあなたに、ぜひ足を運んでもらいたいのが美術館です。


美術館とは、美術作品を展示して、皆さんに鑑賞を楽しんでもらう場所です。

美術作品とは、現代アートの場合もあれば、教科書で見たような名画の場合や、何百年も前に作られた古美術の場合もあります。

大人にも子供にもワクワクしながら鑑賞してもらえるように、美術館の裏側では学芸員をはじめとしたスタッフたちが、作品や作家について日々研究し、この世に一点しかない貴重な作品を大切に保管し、そして魅力的な展覧会の企画を一生懸命考えています。


今はオンラインで体験や学習できることが増えてきましたね。

それでも本当の意味でのアート体験は、実物を目の前にした時にしかできません。


本やパソコンで目にしたことがある作品でも、実際に美術館で鑑賞すると、思っていたより大きい(または小さい)ことに驚くかもしれません。

絵の具の盛り上がりや絵肌の質感、色の混ざり合い、重なり合いだって、画面越しでは伝わりません。

そして何より、作品がそこに「在る」という実感と、一点しかないからこそ作品に備わっているオーラを感じるためには、作品と真正面から対峙するしかありません。


ひとつ耳寄りな話があります。

たましん美術館はもちろん、多くの美術館は中学生までは無料で入館できます(もちろんそうでない美術館もあります)。これは日本でも海外でも共通していることです。

なぜだか分かりますか?


若い時にアートに触れるという体験は、大人になってからでは絶対にできない強烈な感動や大きな気づきや発見をするチャンスだと、どの国でも考えられているからです。

私たちはいつでもあなたを待っています。ぜひ気軽にいろんな美術館に行ってみてくださいね。


■美術館の鑑賞マナー


最後に。

大切な美術作品を守るために、美術館の展示室内で作品鑑賞をする時は次の点に注意してください。

※他の美術館や博物館でも基本的に同じなので、覚えておきましょう。

  • 作品や展示ケースには絶対に触らない。

  • 作品の間近でしゃべらない。大声を出さない。

  • 手荷物を振り回さない。(リュックはなるべく前で抱える。大きな荷物はロッカーに預ける)

  • 鉛筆以外の筆記用具は使わない。(美術館では、受付で鉛筆の貸し出しもしています)

  • 壁にもたれたり、手をついたりしない。

  • 携帯電話やスマートフォンで通話をしない。

  • 原則的に撮影は禁止。(展覧会によっては、撮影可能の場合もあります)

  • 飲んだり食べたりしない。

  • 傘は持ち込まない。

  • 走らない。

美術館鑑賞の手引きはこちらからダウンロードもできます。

美術館鑑賞の手引き
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