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仁科新 個展「仁科 新 展」 インタビュー(地域貢献スペース/立川)

  • t-zaidan
  • 32 分前
  • 読了時間: 7分

多摩信用金庫2階ギャラリー(地域貢献スペース)では、2025年度【若手アーティスト部門】の審査を通過した5人目の作家、仁科新による個展「仁科 新 展」を2026年3月20日(金)まで開催しています。


出品作家の仁科さんに今回の展覧会や制作への思いなどをうかがいました。

 

(聞き手・文:たましん美術館学芸員 佐藤)





――今回の展示を企画したきっかけを教えてください。また、展示を企画するにあたり意識したことがありましたら教えてください。


2024年に松嵜日奈子さん(松嵜さんの展覧会詳細はこちらから)が展示されていたのを拝見した時、まだ次年度の展示企画の応募ができるということがわかりまして、ぜひ申し込んでみようと。僕自身、普段からそこまで色々な場所で展示できるわけでもないので、いいなと思ったんです。

去年引っ越しをしたんですが、子供の送り迎えの時などに空を見ることが増えました。空って思ったよりも揺れ動くというか、変化があるので、それを描き、展示したいなと。引っ越す前までは建物の1階に住んでいて、あまりベランダから空を眺めたりという機会もなかったんですが、引っ越した先は結構ひらけた場所で、なかなかきれいに空が見えるんですよ。夕方から夜に移っていく瞬間の空の様子というのは、これまでの暮らしの中ではあまり意識して見たことがなくて、今とても新鮮なんですよね。


――風景画をメインに制作しているとのことですが、風景というテーマに惹かれた理由を教えてください。


僕は昔から自然豊かな場所に住んでいまして。自分の父がカヤックの選手だったんですよ。川をものすごい波しぶきの中漕いでいくんですが、幼い頃に僕自身も川に連れて行ってもらったことがあって。その時見た風景にとても惹かれたんですが、父から、カヤックに乗っていて波にのまれて亡くなった友人のことなど色々な話を聞かされていると、自然の美しさと同時に怖さというものを強く感じまして、それを絵に入れたいと思ったんです。ただきれいに描くのではなくて、美しさと怖さの両面を絵にしたいと。また、これも幼い頃のことですが、父に川の中州の岩の上に置いてけぼりにされたことがあって。あくまでたわむれとしてされたことだったのですが、これがものすごく怖かったんですね。その記憶も、影響していると思います。あとは、登山に出かけた時、自分にとってはなんてことはない道でも、後から調べてみるとそこで道迷いによる事故や滑落事故があったという記録が残っていて、実は危険と隣り合わせの道を歩いていたことを知ったりだとか。そういったことも、作品制作の動機になっているように思いますね。

また、僕が美大を卒業した時、周囲に人物画をメインに描く人が比較的多かったんですね。そんな中、風景の方が、自分の絵が描けるのではないかと思って選んだというのもあります。


――風景を描くということにはどのような考えをお持ちですか。「絵の中に時間が流れているように制作する」ことを心がけている、というお話もお聞きしていましたが、詳しく教えてください。


人によっては数秒、一ヶ月、一年、といった、絵を見た人それぞれの時間の感覚が感じられる絵を描きたいと思っています。もっと細密に描けば、もう少し詰められるとも思うのですが、かえってそれが邪魔になるのではないかと。ちょうどいいところを探しながら描いているという感じですね。


――あまり細密すぎる絵は、完全に停止しているというような印象を与えることもありますね。


かなり限られてきますが、作品によっては、細密に描かれていても時間を感じることがあります。でも多くの絵は、いい絵というよりも上手い絵だなと感じさせる絵が多いと思います。それは自分としては避けたいと思っていますね。


――仁科さんの作品は、一見すると忠実さを重視して描かれているのかな、という印象を与えますが、実はかなり筆勢が見える絵肌をしていますよね。


なるべく筆跡を残したいと思っています。油絵でも水彩でも、マチエールが魅力だなと思っているので、なるべくフラットにならないようにすることを目指しています。描画初期は、絵の具を盛り上げたり、関係のなさそうな色をあえて置いたりしています。


――普段の制作スタイルについて教えてください。


クロッキーして、写真を撮って、それから具体的な制作を始めます。だいたい途中からはあまり見ないで、自分の想像をもとにして描いていきます。最近は現地で描くこともありますが、少し説明的になってしまうところもあって。…何ヶ月か置いて、思い出しながら描くというスタイルが一番しっくりきますね。そうなると、色々な記憶と混同した部分が出てきたり、余分なところが抜け落ちていったりして面白いんです。「思い起こす」というプロセスを何層も繰り返しながら描くというのが、一番自分に向いているなと思っています。

絵画教室で指導しているので、写生会等で生徒さんたちにお手本を見せる機会があるのですが、そういう時は、いつもの制作とは違う作業をしているなという意識があります。

また、最近は描くスピードを速めたいと思っていて。この《雲》なんかは、何ヶ月か放置して、絵の層を薄く重ねて、というプロセスを繰り返していて、比較的時間をかけて制作していますが、一方で2,3日で描き上げたもの(《境目》など)もあります。それぞれの面白さが全然違って、自分でも新鮮に見えます。というのも、画面の中でうまく色を混ぜるというのが、昔はあまりうまくできなかったのですが、最近「できるかもしれない」と思えてきて、今は新しい技法に挑戦しているというところですね。なんだか、今になって、また楽しくなってきたという感じがします。



《雲》油彩、パネル、91.0×116.7㎝、2026年
《雲》油彩、パネル、91.0×116.7㎝、2026年

《境目》油彩、パネル、50.0×65.2㎝、2025年
《境目》油彩、パネル、50.0×65.2㎝、2025年

――「楽しくなってきた」というのは、新しい技法に挑戦しているということのほかにも明確な理由がおありなんでしょうか。


作業が的確になってきたというか、色んな画材に触れて視野が広がったということがあると思います。昔は油絵だけやっていまして、「この下地を使って、こうやらなきゃいけない」みたいな、自分の中で縛りのようなものがあったんですが、それを疑いだしたというか。水彩やパステルも使うようになっていったんです。絵画教室で生徒さんに教える中で、生徒さんに「なぜこれをやるんですか?」と聞かれて、「たしかになんでこれをやるんだろう」となったことがあり、この作業必要だったかな、とか、別のやり方の方が適切だったかな、とか、自分のやり方を振り返って考える機会ができたんです。発見でしたね。水彩や色鉛筆は、やってみると意外と楽しいということも知りました。


――使う画材によって作品への意識も変わってきますか?


できるだけ変えないようにしていますね。油彩も、パステル、色鉛筆、水彩も、タッチが活きるようにしたいというところは共通しています。


――風景を多く描かれるということが大きいとは思うのですが、横長の画面の作品が多いですよね。モチーフの切り取り方として考えていることはありますか。


横長で広く見せたいという気持ちもありましたが、絶対こうでなければということはなくて。出来るだけシンプルに描きたいというのが強いですね。シンプルな構図でよく見せられないかな、と思っています。


――影響を受けた作家や作品はありますか。


ジョン・コンスタブルやジョン・シンガー・サージェントですかね。コンスタブルの風景画は、まさに絵の中で時間が流れているような、雲の流れを感じさせるような絵だと感じます。サージェントは、タッチを意識して描いている画家だと思うので、それくらい的確に、適度なマチエールをつけられるようになりたいとは思いますね。油絵ならではの魅力というか、そういったものを持った絵を描きたいです。


――今後はどのような活動をしていきたいですか。


現在と同じように、風景画をはじめとして、どんなジャンルの絵も描きたいと思っています。ひと目で自分の絵だと分かる絵を描いていきたいですね。

展示回数も増やしていきたいところです。


――ありがとうございました。


 インタビュー実施日:2026年1月25日


仁科新個展「仁科 新 展」

会期|2026年1月26日(月)〜3月20日(金)

利用可能時間|午前8時〜午後9時

入場料|無料

会場|多摩信用金庫本店本部棟2階ギャラリー(地域貢献スペース)

         〒190-8681 東京都立川市緑町3-4 多摩信用金庫本店2階

お問い合わせ|042-526-7788(たましん美術館)



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